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"Hot, Flat, and Crowded" by Thomas L. Friedman 

“The Lexus and Olive Tree”(「レクサスとオリーブの木」、“The World is Flat”(「フラット化する世界」)の著者、Thomas L. Friedmanによる5冊目の著書。フリードマンはNew York Timesのコラムニストでピュリツァー賞を3回受賞している。

本書はある意味”The World is Flat”の続編とも言える。フラット化する世界では、先進国の生活様式を世界中の人が見ることができるようになって貧困からの脱却の動機付けとなり、ネットのアクセスがあれば先進国経済に直接参加して生活水準の大幅な向上を実現させることすら可能となっていることが描かれていた。本書は、人口急増の中でのこうした「フラット化」による世界各地の急速な「アメリカ化」が、環境・エネルギーに大きな負荷となっていることの警告から始まる。

本書が単なる「エコ本」と一線を画すのは下記の3つの特色による。一つは、環境・エネルギーへの負荷を多面的なシステムとして捉え、システムとしての解決が必要であることを明確にしていること。もう一つは、ターゲット読者を明確に企業のトップや政治のリーダーに据え、今の危機を「チャンス」として捉えるよう繰り返し訴えていること、最後に、解決方法の具体例をビビッドに描き出していることである。

環境・エネルギーへの負荷に関するシステムとしての対応方法
具体的に5つの側面を特定し(エネルギー需給、資源国家の独裁的政治体制、気候変動、エネルギー貧困、生物多様性)、これらすべてを鳥瞰して問題を捉え解決することの重要性を訴える。

例えば(EUでは以前から問題になっているが)、温暖化対策のための代替エネルギー手段としてパーム油を開発するためにインドネシアの熱帯雨林の乱開発が進み、結果として二酸化炭素の放出量がネットで増加してしまうだけでなく、希少植物・動物の絶滅をもたらしているという愚(今地球上では平均20分で1種が絶滅している由)。

米国がそのエネルギー多消費生活形態を維持するために、世界で最も非民主的な国の一つであるサウジの政府と緊密な関係維持に腐心しているが、多額の石油代金がイスラム独自のチャリティ・システムを通じてかなりの部分がテロ組織に回っていること、すなわちテロ組織を自らファイナンスしながら、「対テロ戦争」と称して更に莫大な資金を投じていることの愚。

すなわち環境・エネルギーの特定の側面だけの解決を目指すような部分最適は全体の問題を悪化させる可能性が高く、システム全体としての対応が必要であることを繰り返し説いている。

企業トップと政治家へのメッセージ
読者層として企業トップや政治のリーダーを想定していることは、繰り返し”your company”, “your employee”, “your citizen”といった表現が出てくることからも覗える。企業のトップに対しては、「規制強化」に対してパブロフの犬のように何でもかんでも反対するのではなく、環境規制を競合他社との差別化を図れる「チャンス」と捉え、積極的な技術革新に資源を投入するよう訴える。

本書によれば、エネルギー業界は年間1兆ドルの売上を誇りながらR&D投資はその1%にも満たない(他の業界では8~10%が通常。GEのイメルト社長によれば、過去20年間のヘルスケアとエネルギーへのR&D投資の差額はU$50bilに上る)。

具体的には、2007年にクリーンエネルギーに投じられたventure capitalの投資はU$5bilに過ぎなかった。同じ2007年に省エネと再生エネルギーのR&Dに向けられたFederal FundingはU$2bilに過ぎなかったから、民間投資と合わせてもU$7bilにしかならない(これはマイクロソフト1社の2007年のU$6bilのR&D投資程度の規模である)。Federal FundingでU$3bil、venture capitalを含む民間でU$5bilの合計U$8bilが得られたらそれなりの研究開発は進むであろう。これはたかだか、イラクでの戦争費用の9日間分である。 

ちなみにITバブルの絶頂期の2000年にITに向かったventure capital投資はU$80bilにも上る。バブルの崩壊は個別の事業者や投資家には痛みをもたらしたかもしれないが、社会全体にはバブル期の多額投資は、光ファイバーによるハイスピードのネットアクセスと急速な技術革新・多様なサービスの発生という大きな恩恵をもたらした。

エネルギーも技術革新には、多額の投資と何万人という技術者による多様な技術の研究が必須である。

政府の役割としては、こうした民間による投資を促進するための長期に安定した制度作りが極めて重要。エネルギー開発投資は長期・多額の費用を要し、現在の米国のように再生エネルギーの制度がくるくる変わるようでは企業は安心して投資できない。また、再生エネルギーの経済性は油価によるので、油価によらずガソリン価格を一定以上に設定する税制度設計にするといった工夫も必要。Federal Fundingについては、トウモロコシエタノールのように政府が支援技術を特定して支援を行うのは愚の骨頂で、政府の資金は基礎研究に留めるべき。

政府も企業も、危機をチャンスに変え、”outgreen”する(省エネで競合他社や、他国・他州との差別化を図る)という気概が必要。ソ連との軍拡競争やスプートニク計画が技術の急革新をもたらしたように、省エネ技術での国どうしの競争は技術革新をもたらし、しかもこの場合は地球全体が恩恵を受けるwin-winの競争となる。

解決方法の具体的イメージ
著者は、ジャーナリストらしく、問題提起のみでなく安定した制度設計のもとで技術革新が進んだ理想的な社会を描いて見せる。スマートグリッド・スマートメーターにより、電力消費の「指値注文」ができるようになり、人々は深夜電力で電気自動車の充電をしたり食洗機を回すようになるなど、1日の電力需要が平準化される。電気自動車は駐車中は発電も行い、グリッドに売電する。また電力会社が消費量の増加ではなく省エネ促進により報われる制度設計にすることにより、電力会社は省エネ買い替えを推進し、追加発電所投資の必要量が大幅低下する。

(なおこれらの技術や制度はすでに部分的に実現している。電力会社に関する上記制度はカリフォルニアで導入されており、カリフォルニアのGDP単位あたりの電力消費量はNYに次いで低くCO2排出量は全米で最も低い。また先般の週刊ダイヤモンドによればコロラド州ボルダーのスマートグリッドの実験では、電力消費量が6割も減少した世帯もあった由)。

今後10年が最後のチャンスかもしれない、と危機感を訴えつつ、きちんとした制度設計があればきっと人知で解決できるという、”a sober optimist”による本書は読後感の清々しい本である。

photo
Hot, Flat, and Crowded: Why We Need a Green Revolution--and How It Can Renew America
Thomas L. Friedman
Farrar Straus & Giroux (T) 2008-09-09

by G-Tools , 2009/03/29




photo
グリーン革命(上)
トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社 2009-03-20

by G-Tools , 2009/03/29




photo
グリーン革命(下)
トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社 2009-03-20

by G-Tools , 2009/03/29



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