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「中国 危うい超大国」/"China-Fragile Superpower" 

著者スーザン・L・シャークは、MIT政治学PhD。1997年~2000年、クリントン政権で東アジア・太平洋局担当国務次官補として対中政策を統括。現在はカリフォルニア大学サンディエゴ校大学院教授として太平洋地域の国際関係を教える。

【コメント】
急速な発展の裏で、さまざまなひずみが生じている中国社会の実態を描く。長年中国を研究し、国務次官補として各種外交交渉に直接携わってきた著者であるからこそ書ける、中国の実態に深く踏み込んだ書。表層的なセンセーショナリズムとは無縁の、客観的で冷静な社会評と言える。

中国社会の抱えるひずみは、第2章に詳しいが、急速な高齢化、過度の貿易依存、不良債権、格差の拡大、腐敗などである。国民の不安と不満は強まっているが、選挙が行われず、一般のマスメディアに報道統制がかかっている中国では、こうした不満はインターネットなどで噴出する。

私が特に印象深く感じたのは、実はこうしたネットで表現される過激な反米・反日等のコメントはごく一部の人々の考え方でしかないかもしれないのだが、それ以外に生の声が反映される場がないので、これが「世論」となってしまうという説明だ。党も政府もネットの意見を非常に気にしており、これに振り回されているきらいがある。

実は党・政府も一枚岩ではなく、たとえば、党中央宣伝部が、とある事件について政府としての統一見解でないものを勝手に発表してしまうこともある(ベオグラードでの米軍による中国大使館誤爆事件等)。これに対してネット上の「世論」が愛国・反米で盛り上がってしまうと、暴動を恐れる政府としては取れる外交上の選択肢が縛られてしまうのだ。これは極めて危険な状況と感じた。

要は、中途半端な言論統制は、実は中央集権社会主義国家にとってもろ刃の剣になるということだ。とはいえネットが普及している現在、昔のような完全な言論統制は不可能である。

そうなると現実的な選択肢は、言論統制を廃止し、多様な意見が各種メディアで自由に議論され、そして多数の意思が選挙というかたちで政治に反映される社会にすることだ。現在のような偏向したごく一部のフィードバックが「世論」をリードしてしまう社会は、その国にとっても、そして国際社会にとってもとても危険だという著者の危機感がひしひしと伝わってきた。

最後に、中国政府として取るべき道、アメリカの対中政策で留意すべき点等が書かれているのが、実務家の著書らしい。

翻訳は徳川家広氏。ミシガン大で経済学、コロンビア大学で政治学の修士号を取得。内容の深い理解に基づくこなれた日本語訳で、訳書ということを意識せずに読める見事な翻訳でした。政治経済の分野の本では、なかなかこういった翻訳にはお目にかかれません。

【内容の紹介】
以下ざっと目次と、気になった章の概要です。
第1章 強国の内なる脆弱

第2章 奇跡の経済発展
1978年~2004年にかけてGDPは年率平均9,5%で成長(最近は10%台)、人口増加鈍化により一人当たりGDPも年率8%で成長。しかし、中国は以下のような深刻な問題を抱えている。
・急速に進む高齢化
・GDPに占める貿易の比率75%と国際経済のショックに対し脆弱なこと
・不良債権問題
・雇用の確保(共産党中央党校の元校長の鄭必堅によれば、2006年から2015年にかけて都市部では毎年24百万人の雇用を生み出す必要があり、そのためには最低でも7%のGDPの年率成長率を確保する必要がある)。
・格差の拡大と、それがもたらすかもしれない大衆暴動に対する共産党指導部の恐怖感
・腐敗
・脆弱な公共財(教育、医療の不備、環境問題)

第3章 国内の脅威
指導部も一枚岩ではない。公安部、国家安全部の二つの官庁、人民解放軍、人民武装警察、党中央組織部、党中央宣伝部、社会的安定への強迫観念 民族暴動、労働争議 農村騒ゆう、学生の抗議運動

第4章 メディアとインターネットがナショナリズムを増幅する
宣伝部の予算と権限の拡大
日本、台湾、アメリカは売れるネタ
党も政府もインターネットで世論を読み解く
偏向したフィードバック

第5章 責任ある大国

東南アジア、インド、上海協力機構、6カ国協議、エネルギー安全保障

第6章 日本

第7章台湾
台湾が独立すれば共産党支配は崩れ去ってしまう。台湾が中国領となったのは、モンゴル、新疆、チベット、満州と同じく17世紀の清朝になってから。毛沢東はエドガースノーに「中国共産党が日本を打倒した後には台湾には独立を許すつもりだ」とさえ言っていた。

第8章米国

第9章 弱い中国の方が危険な理由
著者の提案
・党と政府は攻撃的ナショナリズムの促進をやめ、友好的ナショナリズムを促進する
・民間企業の発言力を強める
・軍に対する文民統制を強化
・マスコミに対する党の指導を弱める
・台湾政府と対話する

中国のためにアメリカができること
・中国の内政に干渉せず、対外行動を重視する
・アジア太平洋地域における強大なアメリカ軍を維持
・軍事力はひけらかさない
・日本を軍事大国にしない
・中台紛争を仲裁する
・中国に敬意を示す
・中国の経済大国化をおそれない


photo
中国危うい超大国
徳川 家広
日本放送出版協会 2008-03-30

by G-Tools , 2008/08/10




photo
China: Fragile Superpower
Susan L. Shirk
Oxford Univ Pr (T) 2008-08-15

by G-Tools , 2008/08/10



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コメント

ちょくちょく拝見させていただいてます。
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面白かったです

いつも遊びに来ます。継続して日記凄いですね。僕も努力しないと・・・。もう寒くなってきたので風邪などに気をつけて下さい。応援しています。

こんにちは

はじめまして!またきます。

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