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Licensed to Kill: Hired Guns in the War on Terror 

ジェームズ・ボンドの映画のようなタイトルだが、民間軍事請負会社(Private Military Contractor," PMC")に関するノンフィクション。

【本書の内容】
PMCは、米軍イラク統治下におけるFallujah(ファルージャ)でBlackwater社の契約社員(contractor)4名が惨殺された事件で、一躍一般にも広く知られるようになった。

Blackwater社をはじめとするこうしたPMCは、米軍のアフガン・イラクへの侵攻に伴って雨後の筍のように出てきたが、実は業界としての歴史は古い。いわゆる「傭兵」(mercenaries)は英国などによる植民地(もしくは旧植民地)における影響力行使のために利用されてきた長い歴史がある。近年では"mercenaries"という呼称ではないものの、途上国での資源開発企業の警備のためにこうした企業が使われている例も多い。本初の後半はこうした英国系企業についてである。

一方、本書の前半は、Blackwaterを中心とする米国系のPMCについてのドキュメンタリーである。著者はジャーナリストで、実際にBlackwaterのトレーニングキャンプに参加したり、イラクでcontractors達とともに生活したり、密着した取材を行っているため、ビビッドな描写となっている。

PMCは、国防省やCIAから「ロジスティックス」と「警備」を外注されている企業であり、よってそのcontractorsは厳密には「戦闘要員」でない。警備とは、たとえば、米国から要人が来訪する際に、バグダット空港からグリーンゾーンまでの危険なルートの移動を護衛したり、フセイン政権崩壊後の最初の駐イラク米国大使となったPaul Bremer氏の警護をしたり、アフガンのカルザイ大統領の警護を担当したりといった業務である。

戦闘要員ではないとは言え、業務の性質上、相応の経験が必要であり、contractorたちは元警官や軍人である。軍人の中でも陸軍のDelta Forceや海軍のSEALs出身などエリート・精鋭部隊出身も多い。当然採用基準も厳しく、一旦仮採用されても、トレーニングキャンプを無事卒業し正式採用されるのは、3分の2程度である。

しかし、無事に採用されれば、それなりの報酬が得られる。正規の軍人時代の年収が5万ドルだった人でも、PMCでは年収20万ドルも可能である。会社の儲けも大きく、社員一人当たり1日1500ドルを請求し、社員には500ドル支払う(差額は訓練費用・機器費用+利益である)。

こうして見ると、正規軍を使うよりPMCを使う方が、政府としては高くついてしまいそうだが、なぜPMCの利用が急拡大したのか。建前の理由は、訓練等の外注による効率化である。しかし、それだけではないだろうと著者は暗示する。すなわち、政府・正規軍が関与できない仕事をPMCに外注し、いざとなったら政府は知らぬ存ぜぬ、と言える状況を作るということが目的ではないかと。

それは著者が取材した一人のcontractorの発言に表れている。曰く
"You are deniable, disposable, and deletable." (p.68)

さらには、一人当たりのコストが正規軍人より高くとも、外注により必要人数を削減することによる、「効率化」もある。外注先は入札で決定され、固定費用での契約となるため、PMC側としては最大限「効率化」を図るインセンティブがある。

これが惨劇につながったのが、ファルージャでのBlackwaterのcontractor惨殺である。殺された4名は、新規にファルージャ駐留となったばかりであり、地元の状況にも十分通じておらず、4人がチームとして共に働いた経験もなかった。ファルージャは最も危険な都市の一つと認識されていたにも拘わらず、十分な引き継ぎも事前説明もないまま、とあるロジ業務(運搬)を指示される。通常、こうした業務は2台の"Hard skin"(装甲車)に6名が3名ずつ分乗して行われる。運転手以外の2名が前後左右に眼を配るためである。ところがこのときは2台の"soft skin"車に2名ずつの分乗で行くことになる。

4名はテロ攻撃にあい、惨殺され、何日間も死体は橋に吊るされたままとなった。遺族はBlackwater社宛に訴訟を起こしており、裁判の過程で、Blackwater社側のこうした数々の問題対応が明らかにされた。しかし本書発行の時点で訴訟は決着していない。

この事件で、PMCは広くメディア・一般国民の関心を集め、PMC企業の売上・利益が急成長していることも相俟って、税金使用使途としてのPMC利用の是非についての議論も闘わされるようになったようである。


【コメント】

この本を読んで、PMCの利用には2つ大きな問題があると思った。一つには、前述の過度な「効率化」の問題である。戦地における警備という人の命に係るものを「効率化」による「利益最大化」が目的である民間企業に委託することの是非は慎重な議論を要すると思う。

もう一つは、contractorが、正規軍のような厳しいrule of engagement(交戦規則)に縛られない中で、実質的に「戦闘要員」とならざるを得ない状況もあることである。

前述のようにcontractorたちは、厳密には「戦闘要員」ではないが、攻撃されたら反撃することはできる規則となっている(実質的にはこれがほぼ唯一のrule of engagementらしい)。問題は、イラクのような状況で「戦闘要員」と「非戦闘要員」を区分することの難しさである。

本書で挙げられている例では、Blackwater社のcontractor達と、米軍・およびウクライナ(かポーランド)の駐留軍がいた場所が攻撃にあい、米軍上官は負傷(もしくは死亡)、ウクライナの駐留軍は攻撃を禁じられている中、実質的にBlackwaterのcontractorがその場の指揮を執って反撃・脱出した例である。米軍のアパッチ・ヘリは途中で来たものの、着陸が許可されず、結局負傷者の救出もBlackwaterのヘリで行われた。

すなわちこの場所では、双方ともrule of engagementに縛られないテロリストとcontractorの間で実質的な戦闘が行われたことになる。戦争とはもともと政治の力で厳に回避されるべきものだが、いざ戦争が起ってしまった場合には、やはり国際間の交戦規則で縛られた戦闘員による戦争とそうでない戦争では、たとえば民間人への攻撃等への制約面でも大きく異なると考えられる。現代の戦争が、武器の殺傷力はそのままに、ルール面でのみ前近代の戦争に戻ってしまったという恐怖を感じる。

では、政府はPMCの利用をやめるべきなのか。本書はそうした問いに直接的なこたえは提示しない。しかし、読者に考えるべき大量の情報を提供してくれる本である。

photo
Licensed to Kill: Hired Guns in the War on Terror
Robert Young Pelton
Crown Pub 2007-08-28

by G-Tools , 2008/07/13



【関連記事】
State of Denial
戦争の経済学

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コメント

再度訪問しちゃいました、何度もすいません(汗)
今まではずっと見るだけでしたが実は何度か訪問してるんですw
いつ見てもいい感じですね~羨ましいです(^-^)
今後も覗きに来るのでw
よろしくお願いします^^;

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