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「会社は頭から腐る」 冨山和彦 

著者は、元産業再生機構COO。現在は経営共創基盤CEO。

著者自身のボストンコンサルタント、起業、再生機構での経験を踏まえて、日本企業のかかえる問題を的確に分析し、解決に資する考え方を大胆に提案しています。特に共感した部分を抜粋しながらご紹介します。

【内容】

第1章 人はインセンティブと性格の奴隷である
人間は性悪でも性善でもなく「性弱」である。たとえば日本企業で根回しや調整にかかわる会議がやたらと多いのは、終身雇用と年功序列を基本とする大企業の管理職のインセンティブを考えれば自明のリスクヘッジ手段であるとする(独断で進めて成功しても功賞はあまりない一方、失敗した場合の罰点は取り返しがつかない)。

こうした「相互安全保障」を目的とした会議や業務量は、関与する人数の二乗に比例して増加する一方、業務処理能力は人数に比例してしか増えないので、調整業務が増える一方で本質的な業務能力は高まらない。

その極致が官僚機構で、個人としては優秀でも組織としては拙く遅い意思決定しかできない。「大雑把にいうと、この手の中高年インテリスタッフ比率の高い組織では、上の方からスタッフを半分くらい減らしてもほとんど障害はおきない」。

個人も組織もインセンティブに影響されること、またインセンティブにどう反応するかは性格にもよることから、個人・組織のインセンティブと性格を洞察することが、まず必要な一歩と説く。そして組織は、個人の動機づけ、組織の動機づけ、そして社会の動機づけが同期化するときに最小限の葛藤で最大限の力を発揮する。これを追及するのが経営である、というのが本章の趣旨である。

第2章 戦略は仮説でありPDCAの道具である。
事業の基本的な経済構造は、実はあまり変化しない。基本的な経済構造を見誤っては戦略にならない。一方、市場状況や競争環境はめまぐるしく変わる。状況変化の察知能力、適応力、戦略そのものの柔軟性が重要。

そして何より、日本企業にありがちな戦略の立てっぱなしではなく、きちんとPDCAサイクルを回すこと。企業の強さを分けるのはPDCAサイクルの回転力。

第3章 組織の強みが衰退の要因にもなる
「日本企業が、1970年代から成功をおさめた要因は、会社一丸となって突き進むゲマインシャフト組織を作り上げたからである。それが時代の変化に合わなくなり、変革を求められている。このカギは、ゲマインシャフト組織を否定することではなく、DNAの核心部分にある強みを残しながら時代にフィットしたものに変化させることである。」

第4章  産業再生の修羅場からの臨床報告

第5章  ガバナンスを徹底的に見直せ
ゲマインシャフト社会では「トップを含めた全員の志向が内向きになりやすい。へたをすると内部調和の論理や内輪の規範が外部の社会規範や市場競争の論理に優先する。」
「だからそ、ゲマインシャフトの強みを引き出すには、外部規律、ガバナンス機構が重要になる」。

「ある経営上の意思決定がうまく行われたかどうかは、本来ガバナンス機構が個別に見るべきことではない。」「ガバナンスが評価すべきなのは、その意思決定ではなく、経営者そのものの適性だ。」

ガバナンスの担い手として株主への期待が高いが、最近の日本の「原理的な大衆株主資本主義」は問題である。そもそも、会社が関わる3つの市場のうち、製品・顧客市場/人材市場の時間軸が長期であるのに対し、株主(資本市場)の時間軸は短い。著者の言うとおり、株主の要求としてありがちな、配当引き上げ・負債比率の引き上げは財務理論上、企業価値に影響しないのだから、単にパイの取り分を株主に多くしろといっているだけで、単なる株主のエゴである。

これへの対応としては、議決権のない株式を増やすことや、議決権と保有期間をリンクさせるといったことも一案である。

また著者は人材市場の時間軸にも改善の余地があることに触れ、現在「現場レベル」の人材市場の流動性が進みすぎている一方で、トップレベルのホワイトカラーの人材市場が固定的であると指摘し、本来逆であるべきと説く。すなわちトップレベルのホワイトカラーに雇用保証は不要であり、流動性向上により効率性が向上すること、一方、現場レベルは長年の共同作業が必要な場合が多いのでむしろ長期雇用を確保する方が会社の利益であるとする。


第6章  今こそ本物のリーダーを鍛え上げろ
著者によれば、日本の官僚組織・大企業の経営は、予定調和的で、負け戦・現場を知らずに温室培養されてきた人が多い。こういう人間は、外から与えられた正解に向かって進むことはできても、正解のないところで自らの頭で考える能力も、困難な事態に立ち向かう胆力もない。

「組織からはみ出す根性のない人間をリーダーにしてはいけない」

【感想】

タイトルは二流ビジネス書のようであるが、内容はまっとうで良質と感じた。

このところ数年感じていた「原理的な大衆株主主義資本主義」への批判もまったく同感。

また第1章に書かれている、調整業務は関与する人数の二乗に比例して増大するが、仕事のアウトプットは人数に比例してしか増えないので非効率が増大するという記載は、日本の大企業・官僚組織に属する人の多くが普段からフラストレーションを感じている事態だろう。日本の非製造業の生産性が低いのはまさにこうした組織の性質によるものだと思う。

日本の組織の強みは残しつつ、こうした非効率を根本的に解決するというのは、言うは易く行うは難しである。これを実行するには、トップの明確な問題意識と強いリーダーシップが必要だが、そもそも日本の組織ではこうした「調整業務」を主要業務としてきた人が出世してトップになることが多いので、そもそもこうした問題意識が共有され得ないのではないかとすら思えるときがある。

今の時代、著者の言うとおり「組織からはみ出す根性のない人間をリーダーにしてはいけない」のだと思う。特に、これだけ世界の動向・企業の競争環境が変化している現在、正解がない中で自ら考え果敢に挑む胆力がある人々が経営を担うべきである。

今の日本企業の経営者世代にもこういう人々はたくさんいるでしょう。でも日本の多くの大企業や官僚組織では思い切った世代交代を行わないとだめなのではないか、と思うことが私はよくあります。


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コメント

良書の紹介、ありがとう

>タイトルは二流ビジネス書のようであるが、内容はまっとうで良質と感じた。
全く同感。どうせタイトルは発行元の人間が売らんかなという思いでつけたのでしょう。
良書のご紹介、ありがとうございました。

ユリウス様

こんにちわ。コメントありがとうございます。
私も同僚から勧められたのですが、いろいろ考えさせられて刺激になる本でした。

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