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「戦争の経済学」 

作者は、マイアミ大学(オハイオ州オックスフォード)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスより学位を取得。オハイオ州立大学で経済学と国際関係論を教え、現在ミシガン大学政治学部博士課程に在籍。2001年9月11日の同時多発テロを期に戦争の経済的な側面についての研究をはじめる。政治科学や経済に関する雑誌論文多数(以上アマゾンの商品説明より転記)。

経済学の初歩の教科書のサブテキストとしての使用を想定した内容。

朝鮮戦争に代表されるように、戦争は景気刺激効果を有すると考えられがちだが、最近の戦争は実際どうなのか統計を用いて分析したり(ちなみに結論としては経済刺激効果はなくむしろ負の効果が大きい)、徴兵制と志願制の効果、民間軍事会社へのアウトソースの効果など、戦争の各要素について淡々と経済的側面から分析したもの。

こうした分析の中で、マクロ・ミクロ経済のベーシックな考え(たとえばクラウディングアウト等)の説明がなされていく。また、各章末に読者が自分で考えるための問題が設定されている。

戦争をこのように分析することに、モラル面でアレルギーを感じる人もいるかもしれないが、そうはいっても、政治・イデオロギー・感情にとらわれずに、客観的にデータ面から行う戦争の分析というものも有意義だと思った。

ここで採り上げられているのは、アメリカが当事者となった戦争。ということで当然第二次大戦も分析対象となっているが、アメリカの出兵者数の総人口に占める割合や、費用のGDPに占める割合が思ったより相当低くて驚いた。たとえば第二次大戦での軍人の人口比は12.2%、戦死者の人口比は0.219%である。日本の数値はないが、戦争後期にはかなりの若者や年齢の高い層も出兵していたはずなので、もっと数字は高いと推測される。

なお、第二次大戦時の各国の一人当たりGDPを1990年時点のU$に引きなおすと、連合国側の米国6,134、英国5,938、フランス4,424、ソ連2,150に対して、枢軸国はドイツ5,126、イタリア3,244、日本2,356である。当然合計人口は連合国の方が多いので、経済規模(GDP)からして相当差があったということだ。

ちなみに第二次大戦に米国がかけた直接費用は単年GDP比で31%。これも日本の数値はないが、比率ははるかに高かったのではないか。数値で比べることにより、日本にとっての太平洋戦争の無謀さが客観的な事実としてもっとよく分かると思う。

なお、米国の直接費用GDP比率は第一次大戦は20%。これに対し朝鮮戦争は4%、ベトナム戦争は1%、湾岸戦争は1%。イラクは1%未満である。イラクについて今、高額の戦費が問題になっているが、それでも第一次・第二次大戦に比べたらGDP比率ではるかに低いのだ。

なお、上記は単に私が興味を持った「データ」であり、本書のポイントは各種理論を適用した分析にあるので、誤解なきよう。

戦争というものをデータ・理論から考えるためにも、経済理論の基礎について理解の助けとするにも役立つ本だと思う。単なる理論の教科書を読むより、このように現実のテーマに即して考える方が身につくと感じた。

photo
戦争の経済学
ポール・ポースト 山形浩生
バジリコ 2007-10-30

by G-Tools , 2008/05/11


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