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"The God Delusion" by Richard Dawkins 

リチャード・ドーキンス著の"The God Delusion"をようやく読み終わりました。リチャード・ドーキンスは「利己的な遺伝子」説で有名な遺伝子学者です。この本は「宗教」の依って立つ基盤を一つ一つ吟味して論破しつつ、宗教が社会に対して与える「悪影響」について強い警告を発する本です。

宗教を信じていらっしゃる方にとっては、この本も、従ってこの本を紹介する本記事もご不快に感じられるかもしれませんが、ご容赦下さい。

この本はNew York Timesのベストセラー欄に長く載っているので興味を持ったのですが、読み始めたときに私が思ったのは、

「こんなに過激なことを書いて大丈夫なのか、宗教原理主義者に脅迫されたり、場合によっては殺されてしまうのではないか」ということと、

「なぜ有名な遺伝子学者である彼が、敢えて専門外の宗教についてここまでの大著を書く必要があったのか」ということです。

読み進めていくうちに、著者の「宗教に対する戦い」はこの本だけでなく、過去にも宗教と科学に関するパネルディスカッションに参加するなど、この分野でかなり精力的に活動しているということも分かってきました。となると、ますますなぜ敢えてこのようなタッチーでかつ相当の労力を要するこうした議論に踏み込むのか疑問が強まります。

遺伝子学者としての彼の確立された功績に鑑みれば、何もこのような異分野に足を踏み入れる必要もないし、遺伝子学者としての彼のもつ能力・時間がもったいないのでは、とも思いました。

さらに読み進めて、理由がようやくわかってきました。日本に住んでいる日本人にはピンと来ないことですが、欧米の多くの国やイスラム教の国では、宗教は日常生活・政治・教育などに非常に強い影響力を持っています。

例えばアメリカでも、右派キリスト教団体は共和党にとっての非常に重要な集票マシーンであり、教育から法律まで幅広い影響力を行使しようと組織的な活動を展開しています。アメリカでは生物の授業学校でも進化論を教えるべきではなく、天地創造論を教えるべきだといった議論も各所で度々なされています。

また、この本で紹介されているエピソードによれば、大学で高い科学専門教育を受けた学者が、聖書は地球の進化の過程をほぼ正しく記していると真剣に研究した論文を発表しているなど、幼い頃から受けた宗教教育の影響力の強さがいかに強いかをうかがわせます。

また過激なキリスト教信者が中絶を行う病院に爆弾テロをしかけ、医者を死亡させるといった、キリスト教に基づくテロもアメリカでは結構発生しているそうです。

こうした社会においては、科学者が科学的なものの考え方・論証の仕方・真実の探求の重要性を訴え続けなければ、社会は迷妄化していくという、著者の危機感がわかるような気がします。

ただ、私を含めた一般的な日本人の感覚としては、たとえばアメリカ人でも、聖書を文字通り信じている人はむしろ少数派で、多くの人は単に聖書をモラルの拠り所としたり、何と無く社会の慣習に従って教会に行ったりしているにすぎず、そこまで宗教に目くじらを立てる必要もないのでは、という感じではないでしょうか。

しかしこの本で著者が訴えたいことは、聖書を文字通り解釈する人々がたとえ少数派であっても、そういう人の方が組織的に戦う(集票からテロまで)のでかなり影響があるということと、また大多数に人々にとっても、聖書を文字通り信じていなくとも「信じていない」と断言することは、ましてや無信教の人が「私は無信教」だと公言することは、家族や社会から除けものにされるリスクを伴うものだということです。

また、著者はモラルの拠り所としての宗教の意義という考え方に対しても、一章を割いて、宗教を信じる人とそうでない人で、前者の集団の方がモラル的に水準が高いとは言えないということを、科学者らしく綿密な議論を展開しています。

著者の訴えたいポイントは後ろの方の章でより明確になります。十分な知識や判断力を持たない子供の頃に刷り込まれた宗教教育の影響は、個人の人生および社会に対し甚大なる影響力を有すること、教え方によっては子供は非常な恐怖心を持ち(地獄のイメージ等)トラウマのようになること、また教えられたことを盲目的に信じるメンタリティとなり、論理的思考力・真実の探求の精神を奪うこと、よって、子供の頃に特定の宗教を信じるよう、強制すべきではないこと。

私自身は、著者ほど宗教に強く否定的な考えを持ってはいませんが、著者の言い分にはもっともだと思われる部分も多々ありました。宗教でもイデオロギーでも、絶対的権威を押し付け、個人の判断を否定するものには、警戒心を持つべきだという点では私もその通りだと思っています。

最後に、本著はテーマは重いのですが、著者のユーモアを交えながらの軽快な筆致につい引き込まれて読んでしまいます。科学者で、かつこれだけ宗教・文化・歴史についても博学で、文章力もすばらしいドーキンズという人は、やはり卓越した人だとつくづく思いました。

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The God Delusion
Richard Dawkins
Mariner Books 2008-01-16

by G-Tools , 2007/09/24




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神は妄想である―宗教との決別
リチャード・ドーキンス 垂水 雄二
早川書房 2007-05

by G-Tools , 2007/09/24



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コメント

>>宗教でもイデオロギーでも、絶対的権威を押し付け、個人の判断を否定するものには、警戒心を持つべきだという点では私もその通りだと思っています。

いつもYNさんに大賛成ばかりで、自分の意見はないのか(笑)って感じですが、やはり私も大変重要なポイントだと思います。

日本人の宗教に対する感じ方と外国人の多くのそれは、根本的に大きな差があるような気がします。私もある宗教団体に所属していますが、まず日本人は信じるまでに何年もかかります。しかし、多くの宗教的背景が違う外国人は、既に根本的に「何か」を信じているのです。それは場合によっては強みです。(顔を見合わせて話し合っても誤解が生まれやすい宗教問題なので、ネットの書き込みだけでは、この部分、或は色んな部分をとうてい説明し切れるものではありませんが) しかし、ここで説明されているような事柄を、盲目的に信じ込んでいるのは問題ですね。

この本の趣旨とはずれますが、科学と宗教が相反するものだとは一概には言えないでしょう。上手く説明できませんが、それこそ科学者だから信じない、と決め付けるのではなく、説明が付いたものを科学と呼ぶのなら、未だ説明の付かない部分をお互いに補い合いながら、よりよい、より正しい人間生活(笑)を追求していくべきではないでしょうか。科学だけ、宗教だけ、何々だけ、と偏るのは、時として危険な気がします。

それにしても、この著者は、思い切った題名を付けましたね。。。

話は変りますが、この更新rssフィードが私のフィードリーダーに反映されたのが本日25日でした。なんでそんなに時間差があるんでしょうね~

まゆみ様

こんにちわ。コメントありがとうございます。タッチーな内容の本なので、記事をアップするかどうか悩みました。まゆみさんは信教を持っておられるとのことで、ご不快に思われた部分があったらごめんなさい。

でもこうしてコメントして下さって嬉しく思います。自分の判断で何かを信じるようになっていくというのは、私はすばらしいプロセスだと思います。

皆が自分なりの信念を持ちながらも、他者の考え方を尊重する社会であればどんなによいかと思います。
そのためには、おっしゃるように「偏ること」の危険性を常に念頭においておかないといけませんね。

是非、読んでみます。

YN 様

いい本の紹介、ありがとうございます。
読まない先から、ドーキンスに大賛成したい気持ちになってます。今から本屋に走ります。

一神教の人たち、特に政教未分離な社会の人たちの混乱は永遠におさまらないと愚考します。

エネルギー、食糧、環境、トリレンマの上に、人口増大がからんで、地球上はますます済みにくい環境になってきます。これらの解決に何の足しにもならない昔の人の「教え」は何にせよ小生は信じません。

ユリウス様

こんにちわ。コメントありがとうございます。

政教分離は本当に重要ですよね。この本でも、また前の記事でご紹介したバラク・オバマ氏の本でも強調されていましたが、米国の建国の父たちは基本精神として政教分離を掲げていたそうです。

それにくらべて、今の米国の政党、特に右派キリスト教グループを集票マシーンとする共和党は、退化しているのではないかと考えてしまいます。

この本では、現代社会で「昔の人の教え」を金科玉条のように一言一句文字通り信じることの愚も説いています。そうして、彼自身の創作や、その他世の中に出回っている「現代版十戒」も紹介されています。面白いです。

とにかく重いテーマではあり考えさせられはするものの、読み物としてとても面白い本です。

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