FC2ブログ

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

State of Denial (3) 

この記事は前の記事の続きです。
State of Denial(1)
State of Denial(2)

判断ミス2 フセイン政権打倒後の戦後統治の困難さを過小評価していたこと
ブッシュ政権のもう一つの判断ミスは、フセイン政権崩壊後の戦後統治の困難さを過小評価していたことである。要はフセイン政権さえ打倒してしまえば、あとはイラク人に新政権を作らせ、米軍は短期間で引き上げられると考えていたようである。

しかし、政権内もこの点について一枚岩であった訳ではない。ラムズフェルド国防長官(当時)は、当初から最小限の派兵を主張しており、しかも短期間で引き上げることを想定していた。一方、パウエル国務長官(当時)は大量派兵が必要になると主張しており、両者は真っ向から対立していた。しかし、結局ラムズフェルドの「精鋭短期投入」方針が政権の方針となり、ブッシュ政権二期目でパウエルは政権を去ることとなり、ラムズフェルドは続投となった。

もちろん、ブッシュ政権でも戦後統治についてまったく準備をしていなかった訳ではない。侵攻前から、戦後統治責任者としてGerner氏が任命され準備は行っていた。彼のチームが侵攻前の2003年にシミュレーション(Rock Drill)を行いそれに基づいてアナリストが作成した20ページのレポートは、まさに現状のイラクの問題の本質をずばり突いたもので、その先見の明は注視に値する。

その問題提起とは、
1)治安維持対策が不十分であり、内戦状態を引き起こす可能性があること。
2)(戦後統治のための)資金手当てが確保されておらず、このままでは、イラクをテロの温床にしてしまう可能性があること。
3)最も重要な問題、すなわち将来のイラク政府の姿や、どのようにそれを実現するかが議論されていない。

また、シミュレーションの他の参加者からは、水・電気などの基本的な生活インフラ維持についての懸念も表明されている。これらの点こそ、まさにイラクの現在の混乱を端的に表しているではないか。

問題は、これらの問題提起が侵攻前に政権首脳に伝わっていたかである。本書を読む限り、このレポートの問題提起が政権首脳にそのまま伝わったかどうかは不明である。

少なくとも、上記のシミュレーションの後の2003年2月28日、Garnerは大統領、ラムズフェルド、パウエル、ライスなど首脳に対しSituation Roomでプレゼンを行っている。侵攻後に必要となるタスクのうち大量破壊兵器の破壊、テロリスト撲滅、イラク軍の再編、治安体制の再編は、彼に与えられたあまりに小規模のチームではできないことなどを説明したが、特に質問は出ず、その4点を誰が引き取るのかもその場で議論がされた様子はなかった。

主要戦闘が終わった後、不安を抱いたままGernerはイラクへと発つ。水・電気などの生活インフラは崩壊しており、予想以上の厳しい環境・大混乱の中で、彼のチームは最善を尽くし、Gernerは何とかイラクの主要宗派の代表者数名を集め、イラク人から成る政権樹立への道筋を探ろうとする。またホワイトハウスに対し、「脱バース党政策」(バース党:フセイン政権下の与党)は各省庁などのトップのすげかえに留め、それ以下のメンバーは維持しなければ国の運営が不可能になること、また既存のイラク軍もトップは挿げ替えて残りはそのまま利用しなければ治安維持が不能であることを訴え続ける。

しかし、以前の記事で書いたように、突然Gernerは事実上途中解任され、外交官出身のBremer氏が米国代表として任命される。彼は着任後数日でGerner氏の方針をすべて覆し、彼が集めたイラク人各宗派代表者のグループを解散させ、上から4層までの脱バース党化を宣言、イラク軍も解体した。結果として、35万人の対米不満分子(うちかなりが武器を持ったまま)を野に放つとともに、治安・生活インフラの担い手を一気に失い、イラクを大混乱に陥れることになるのである。

もちろんこれらは彼個人の決定ではなく、ホワイトハウスの意向を受けてであろう。脱バース党化の徹底・イラク軍の解体は、イラクを完全に変革するという机上の理論としては受けがいいかもしれないが、現場からまったく乖離した非現実的な施策であるとしか言いようがない。しかしイラク各宗派の代表者のグループを解散させたのは、イラク人による政権を迅速に樹立するというホワイトハウスの方針にも反しているように思われ、(後日批判されるように)イラクの政権責任者は自分自身であるというマッカーサー・スタイルの戦後統治を気取ったBremer氏のスタイルの問題である可能性もある。

結局、2003年7月にBremerはGernerが集めた数名を含む25名の”Governing Council”を承認しイラク人による政権樹立を促すことになるのだが、Councilが延々と議論を続けた挙句出した結論は唖然とするようなものだった。シーア派・スンニ派・クルド人間の対立を考慮し、Councilのうちの9人が毎月一人ずつ交代で大統領を務める、というものである。

ホワイトハウスのある高官の言葉を引用すれば、“Iraq was an abused child for 30 years. Saddam Hussein had killed many of the elites and most of those who weren’t killed left the country and lived in exile. Now the exiles were back, but the country was so divided no one could agree on much of anything.”(p.234)

現在シーア派のマリキ氏が首相になっているが、シーア派・スンニ派・クルド人の間の対立は激化しているのみならず、シーア派内部の権力闘争も激しくなっており、各省庁の代表は国家のためというよりは、自分の属するグループの利益のことを考えている。治安はますます悪化し、Gernerのアナリストの予言は現実のものとなってしまった。

治安だけでなく、生活インフラ・食料供給は破綻し、そしてイラクにとっての貴重な外貨収入源である石油のパイプラインもテロ攻撃を受けて悲惨な状況にある。

本書にある、スコウクロフト(シニアブッシュ政権での国家安全保障問題担当大統領補佐官)の言が、ブッシュ政権の判断ミスの本質をずばり突いているので引用する。

Most tragic, Scowcroft felt, was that the administration had believed Saddam was running a modern, efficient state, and thought that when he was toppled there would be an operating society left behind. They hadn’t seen that everything would collapse, and that they would have to start from zero. They hadn’t seen the need for security, or that probably 90 percent of the Iraqi army could have been saved and used. So Iraqi is now overwhelmingly insecure. (p.420)

「ブッシュ政権は、フセインが近代的で効率的な国家を運営していると考えていた。だからフセイン政権さえ倒せば、きちんと機能する社会が残されると考えていた。彼らはすべてが崩壊し、ゼロからスタートしなければならなくなるとは思っていなかったのだ。彼らは治安維持の必要性も予測しなかったし、イラク軍の90%を維持して利用できるとも考えなかった。結果として、イラクは今非常に不安定になっている。」


関連カテゴリー:|Politics, Economy & Business |

紹介媒体: | 洋書 | 英語iPod/英語ポッドキャスト | 英語CD | 翻訳版 | 対訳本 | 映画DVD | 映画スクリプト | → 「ブログ内検索」で同じ媒体を紹介している記事を探す 

スポンサーサイト

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://englishbynatsuno.blog62.fc2.com/tb.php/141-c219031b

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。