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秋の田の穂の上に霧ふ朝霞 

〔万葉集巻2-88〕

秋の田の穂の上に霧らふ朝霞いづへの方にわが恋やまむ
(読み)あきのたのほのへにきらふあさがすみ いづへのかたにわがこひやまむ
(原文)秋田之 穂上爾霧相 朝霞 何時辺乃方二 我恋将息


試訳((c) Y.Natsuno)

Over ears of rice in the autumn field,
Lingering is the morning mist;
Are there limits to my love somewhere?

Over ears of rice in the autumn field,
Lingering and glistening is the morning mist;
I can’t see the boundaries
of the mist
or of my love


磐姫皇后について
この歌は、仁徳天皇の皇后磐姫皇后作として万葉集に載っていますが、実際にはそれより後の時代の民謡歌のようなものであろうという考えが一般的です。磐姫皇后は嫉妬深い皇后として「古事記」「日本書記」に描かれています。「古事記」には「足母阿賀迦邇嫉妬したまひき(あしもあがかにうはなりねたみしたまひき)」とあります。天皇が他の女人に目をかけると地団太を踏んで激しく嫉妬したということです。

こうした記述から磐姫皇后は悪妻の典型のように言われてきましたが、私には、天皇の一夫多妻が当然の時代にあってこのように激しく愛情を表した磐姫皇后は、きっと意志が強く情熱的な女性であったのだろうと思え、とても魅力を感じます。


歌の解釈について
この歌の解釈は二通りあります。
一つは、秋の田の穂の上に朝霞がかかっているが、その霞がいつかどこかへ消えるように、私の恋もいつかは消えるだろうか(そうは思えない)
(「万葉秀歌」斎藤茂吉、「万葉秀歌」久松潜一など)、

もう一つは、「秋の田の穂の上に霧がかかっている。果てしがない。私の心はそのように」「東も西も分からない。それがそのまま私の心ということ」(「万葉の人々」犬養孝)。

前者の解釈を採るなら、最後の3行はたとえば” Will my love ever fade away to somewhere?”といった訳が考えられます)。

冒頭の訳は後者の解釈を採りました。前者の解釈だと、一瞬霧が晴れる映像が目に浮かんでしまって、その後言外に晴れることが否定されても、一旦晴れ上がったイメージはどうしても残ってしまう。でも後者の解釈を採ると、先の見えないまさに「五里霧中」の不安感があります。ただし、単なる「五里霧中」ではなく、「秋の田の穂の上に霧ふ朝霞」という表現から想像されるように、黄金色の田の上に朝日を受けてきらきらと輝く霧であるために、不安はありながらその霧の中にずっといたいとも思えてしまう、そういう美しさがあると思います。

英訳について
上の句は比較的簡単にできましたが(ただ、冠詞と単数・複数形は悩んでいます)、下の句は苦吟しています。”Where is the end of my love”なども考えたのですが、うまく上の句とつながらない。とはいえあまり説明調にもしたくない。ということで、現状はちょっとつなぎ表現が入っています。


この歌は、磐姫皇后の歌として四首連続して掲載されている中の最後の一首です。次回、他の三首とつなげてご紹介します。


関連カテゴリー: | 英詩と和歌 |

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コメント

読めば読むほど、綺麗な、可愛らしい恋の歌ですね。
この歌を選択されたYNさんが、また、私の中のYNさんとピッタリ+少女のイメージになりました。(私、いつも、こんな事言ってますね。 笑 ネットでの交友では、ついつい向こう側に見え隠れする人間を探ってしまいます。)
英訳も、私には到底できそうにない、簡潔で清潔な感じがします。
「秋の田の穂の上に霧ふ朝霞」が、いやらしい嫉妬心を感じさせませんね。 しかし、安定しきって不安がないものを、恋とは呼べないかも・・・

「秋の田の」というと、百人一首の天智天皇の「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ」しか思い浮かびません。
そして、よく似た下の句の「君がため春の野に出でて若菜つむ 我が衣手に雪は降りつつ」を同時に思い出してしまうんですよねぇ…
そうなんです、私は百人一首に出てくる歌しか知らないんですよ(爆)。

霞についてはそのように二通りの解釈があるんですね。「霞のように fade away する」のか、「霞のように linger する」のか。
英訳を変更されたのですね。和歌や詩の訳、というのはとても難しいですものね。どちらも素敵だと思ったのですが、変更後の「疑問文」の方が不安感がより出ているかもしれませんね。(詩に詳しくない私の意見なので、軽く受け止めて下さいね…笑)

Mayumi様

コメントありがとうございます!
ほんと、この歌は純粋な感じがしますね。嫉妬のあまり地団太を踏んだというイメージとはちょっと異なるけれど、でも磐姫にはきっとこういう面もあったのだろうなと思います。

そうですね。安定しきったものは、もう「恋」ではないんでしょうね。でも夫である人に対してさえこうした不安を持ち続けるなんて、昔の皇族・貴族の妻って大変だなと思います。

Rach様

コメントありがとうございます!
お、私も「我が衣手は露にぬれつつ」と「我が衣手に雪は降りつつ」は、セットで覚えていましたよ。

今回の英訳は、どんどんシンプルになりました。この時代の万葉歌は民謡・伝承みたいなものなので、素朴で直接的で、中世の歌などよりよほど分かりやすい。なのでそういう感じにできたらいいなと思っています。

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