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真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earring) 

全世界で200万部以上を売り上げたベストセラー「真珠の耳飾りの少女」の映画化。私は、原作はあまり好きになれませんでしたが、映画は楽しめました。映像の美しさだけでも十分見る価値があると思います。特にフェルメールの絵が好きであれば、ぜひ見てみて下さい。

Story
17世紀のオランダ、デルフト。少女グリートの父は腕のよいタイル職人だったが働けなくなってしまったため、グリートが奉公に出ることになる。奉公先は、フェルメール家。

フェルメール家には、画家のフェルメール、夫人、夫人の母親、たくさんの子供がいる。グリートは、前からいる召使のタンネケと共に、毎日掃除・洗濯・食事の仕度に追いまくられる。しかもグリートには、もう一つ仕事があった。画家のアトリエの掃除。

やがてグリートは、顔料を混ぜ合わせるなど画家を手伝うことになる。ただでさえ忙しい日々の中、嫉妬深い夫人に見つからないように助手としての仕事をこなすのはかなりの負担であったが、グリートはその仕事に喜びを見出す。そして、、、。


コメント
この映画は、フェルメールの絵のように、光と影と色彩を見事に使いこなしています。映画冒頭、グリートが野菜を切っている場面は、まるでフェルメールの絵から抜け出てきたようです。その後も、グリートがアトリエの窓を拭く場面など、各所に絵のような場面があります。

そして、もう一つ映画の武器である音も効果的に使われています。グリートが野菜を切る音、二人が顔料を混ぜる音、アトリエの足音や床のきしむ音(これを階下で夫人が聞いています)、キャンバスに筆のこすれる音。

音楽もとてもすてきです。光のゆらめきのような静かで底に情熱を秘めたような音楽。

映像と音の美しさを堪能できる映画です。

ストーリー自体は、原作もシンプルで淡々としているのですが、映画はさらにシンプルになっています。原作では、もう少しグリートの両親の話、グリートとフェルメール家の子供たちとの交流、顔料の説明など、細かく書き込まれていますが、映画ではかなりはしょられています。終わり方は、原作ではもう少し何かあったような気がしますが、何せずいぶん前に読んだので忘れてしまいました。映画はあれっというぐらいあっさりと終わってしまいます。でも映画としては焦点が拡散せずよかったと思います。


私が、原作を好きになれなかったのは、原作で描かれているグリートが好きになれなかったためです。原作は、グリートの一人称で書かれていて、周りで起こっていることに対しグリートが考えていることがすべて書かれています。

原作に描かれているグリートは、10代の少女の初々しさのかけらもありません。よく言えば、腹がすわっていて、要領がよくて、周りをよく観察している、悪く言えば、いけずうずうしくて、ずる賢くて、小賢しい。情感や、設定から期待されるような、感性が花開いていく過程も感じられない。10代にして小さくまとまってできあがってしまっていて、干からびた小母さんという感じなのです。

映画が原作よりすぐれていると思ったのは、原作にあるグリートの心の中の小賢しいコメントが一切排除されていること、そして、何よりグリート役スカーレット・ヨハンソンの可憐さと、彼女のあるかなきかの微かな表情の変化による演技で、原作に欠けている情感が表現されていることだと思います。

もしかしたら、17世紀オランダで10代の庶民の少女は、実際には原作のような感じだったのかもしれません。教育も教養もないまま若い頃から家を切り回したり家計を支えたりしなければならなければ、初々しさも情感もあっという間に干からびてしまう。でも、現代人としてはやはり映画のグリートの方が好きになれると思います。

そして、フェルメール役のコリン・ファースも、抑制された演技で、見事に情熱を表現しています。グリート役にスカーレット・ヨハンソン、フェルメール役にコリン・ファースというのは、他にはもう考えられない絶妙なキャスティングでしょう。

映画で、雰囲気を堪能し、原作を解説書として読めばさらに楽しめるのではないでしょうか。原作は、顔料の話や、カメラ・オブスクラを利用したフェルメールの画法などについて、よく調べて書いており、それはそれで楽しめると思います。

映画DVD

photo
真珠の耳飾りの少女 通常版
オリビア・ヘトリード ピーター・ウェーバー スカーレット・ヨハンソン
メディアファクトリー 2005-01-14

by G-Tools , 2006/08/10




原作(洋書)
photo
Girl With a Pearl Earring
Tracy Chevalier
Plume 2001-01-08

by G-Tools , 2006/08/10





原作(英語朗読CD)
photo
Girl with a Pearl Earring
Tracy Chevalier Ruth Ann Phimister
Recorded Books 2004-07

by G-Tools , 2006/08/10




原作(翻訳版)
photo
真珠の耳飾りの少女
トレイシー シュヴァリエ Tracy Chevalier 木下 哲夫
白水社 2004-03

by G-Tools , 2006/08/10








関連カテゴリー: | ラブストーリー・ラブコメディ |
紹介媒体: | 洋書 | 英語CD | 翻訳版 | 映画DVD | → 「ブログ内検索」で同じ媒体を紹介している記事を探す 
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コメント

この映画、私も好きです。フェルメールの絵画を思わせる映像が本当に美しいですね。セリフは少なめで、目の動きや仕草で気持ちを表していたのが印象的でした。
原作は読んでいませんが、YNさんのコメントを読ませていただくと、たぶん私も映画のほうが好きだと思います。俳優の良さも一役買っているのでしょうね。特にスカーレット・ヨハンソンはとてもよかったです。

是非見たい作品ですね

これまた見てませんが(笑)、この映画の紹介を以前に読んだことがあって、「見てみたいなぁ」と思った作品のひとつです。さらにYNさんの記事を読んで、ますますその気持ちが強くなってしまいました。光の描写とか、lapis lazuli とか、とても美しいですよね。

YNさんが原作を好きになれない理由、すごくよくわかります。「少女」には大人の女性とはまた違う「危うい魔性」のようなものがあるのですが(当時の私にもあったのか?と聞かれると恥ずかしいけれど・・・笑)、苦しい生活ではYNさんがおっしゃるようにそういうものが干からびてしまうんだと思います。一方の現代人は、豊かだけれど、まわりに情報がありすぎて、「現実」を頭で先に知ってしまって、そういう自由な感性が育たなくなるのかも。

「嫉妬深い夫人」の話は「妻」をやってる人間として、とてもよくわかります。YNさんが書かれている「音」のくだりは読んでいるだけでドキドキしました(笑)。そもそも彼女が「若い」というだけで妻は嫉妬するものですが、二人は芸術や感性の部分で共感しているのだ、という事実を考えると居ても立ってもいられないでしょうね。自分のダンナさんが、自分の知らない世界で、他の女性と心を通わし、お互いに刺激し合っているというのは、つらいですよ・・・。
かと言って、そういう感性の鋭い二人はとてもドラマチックな恋愛ができると思うけど、結婚しても幸せな生活は送れそうにないですが・・・(爆)。
(芸術的な映画の話なのに、ただのヤキモチおばさんの話になっちゃったなぁ・・・溜息)

YGさま

コメントありがとうございました。
私は、実はこの映画で初めてスカーレット・ヨハンソンを知りました。けっこういろいろな映画に出ているのですね。これから注目してみてみます。とにかくグリート役はほんとにはまり役でしたね。

脇役の、夫人や夫人の母、フェルメールのパトロンや、精肉屋の少年なども、皆17世紀のオランダ絵画から抜け出てきたようで、演技もうまくとてもよかったですね。

映画は、欲を言えば、色彩や光に対するグリートの感性が研ぎ澄まされていく過程をもう少し描いてほしかったなとは思いますが、でもよく纏め上げられたいい映画ですよね。ときどきまた見たくなる映画だと思いました。


Rachさま

コメントありがとうございました。そうです、その言葉。「危うい魔性」。原作にはそれがないのですな。

夫人役の演技も、共感できてよかったです。本も若いころ読んだら、完全にグリートの視点で読んだと思いますが、この年になるといろいろな人の視点で読むことになります。私が原作のグリートをいけずうずうしいと感じたのは、夫人の視点も入って読んだからかもしれませんね。フェルメールとの関係だけでなく、すべてにおいてあまりに要領よく立ち回るので、この生意気な小娘が!と思ってしまう(笑)。

それにしても芸術家の妻というのは大変ですね。感性を共有できないと、夫が他に目移りし、かといって2人ともあまりに鋭い感性の持ち主だと、恋愛も結婚も持続させるのは大変そうですよね。高村光太郎と智恵子や、ロダンとカミーユ・クローデルみたいになっちゃいそうで。

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